夏の旅/Sommer Reisen
ピアノ・リサイタル (2007年)
「街のノイズをサンプリングして楽音と競わせるという手法は、格別新しいものではない。だが、街で聞き慣れていて、ほとんど意識しないような音が優雅な旋律を遮ると、楽音に酔っていた耳は瞬時にして日常、あるいは現実に引き戻される。その遮断、あるいは衝突は、ゴダール映画のように暴力的なもので、睡眠中に無理やり覚醒される感じにも近い。覚醒して目を窓外に転じると、開演時にはオレンジ色だった空はいまや黒々と沈み込み、高速道路を走る車のヘッドライトが目を貫く。音楽が、芸術が、そして僕たちの生活自体が、優れて都市的なものであるという当たり前の事実が、視覚的、聴覚的に素直に納得される。」(小崎哲哉「Real Tokyo」、2007年8月)
コンセプト
「夏の旅」はシューベルトの即興曲にインスピレーションを受けたピアノ・リサイタルのシリーズ。向井山は2007年のひと夏、5つの地域の住民、学生たちと対話を重ね、自分たちの故郷を取り巻く風景,環境音を録音するよう依頼し、向井山はその数多くの録音からサンプリングを選んで「夏の旅」の音素材として使用した。各地域の音風景はシューベルトの作品や彼女自身の即興曲に織り込まれ、新しいピアノ作品として生まれ変わった。
クレジット
コンセプト、ピアノ:向井山朋子
主催・共催
門中天井ホール (東京)
ダハ・プランニング(仙台)
S-AIR(北海道・札幌)
東山音楽振興会(岩手・一関)
白鷹町・滝野交流館(山形)
協賛・助成
アサヒビール芸術文化財団
オランダ舞台芸術振興基金