SHOES’ (シューズ)

インスタレーション・パフォーマンス(2011年)

「SHOES’(シューズ)」は光と炎と音楽とバーレスク的雰囲気にあふれている。
しかしそれでいて静謐な作品である」–NRC Handelsblad (オランダ紙)

コンセプト

タイトルのとおり「SHOES’(シューズ)」は靴が主要なモチーフであり、 身体性とファッションをピアノパフォーマンスの形態で結びつける試みである。ピアニスト向井山朋子は鍵盤や指だけでなく、彼女の足に、天井に、床のモニタへと観客の関心を向かわせる。靴は1時間のパフォーマンスの中で、演奏と楽曲とのドラマチックな対位法的な役割をはたす。すなわち、靴はほとんどの人間のようにダンスし、泣き叫び、恋をし、最後には消滅する。パフォーマンスの後、インスタレーションはその場に残り、終わった舞台が瞬時に展示スペースヘと変移する。

「SHOES’」はピアノ・コンサートであり、インスタレーションであり、ソロ・パフォーマンスである。また「SHOES’」は向井山朋子のソロ・パフォーマンス・シリーズ「Sonic Tapestry」の一部であり、シリーズ5番目の作品でもある。常に視覚的要素を持ちバロック、ロマン主義、現代のミニマリズムから電子音楽まであらゆる時代のピアノをレパートリーに持つ向井山にとって、異なる時代の音楽を組み合わせ、独自の形でキュレーションする彼女のコラージュ的な演奏スタイルは、向井山の独自のパフォーマンス・スタイルである。

視覚芸術において20世紀初頭からはじまったコラージュの技法は、もはや古典とよばれる手法だが、向井山が行うような、音楽をカットアップし再編集、新しい文脈を作るやり方はクラシック音楽の分野ではまれかもしれない。
例えば「SHOES’」の一部でバッハの「フランス組曲」(1722年)は、アメリカ/メキシコの作曲コンロン・ナンカロウの作品「2つのパートのための習作」(1940年代)と絡められる。これら二つの作品をリミックスし、即興とビジュアルの層でそれらをあるひとつの枠組みにしていくことで、作品は異なる音楽性を持ち、お互いに影響を与え合う。

「SHOES’」は以下の曲目の断片から構成される。

J.S.バッハ「フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813」
ジョン・ダウランド「流れよ、わが涙」
フレデリック・ショパン「前奏曲 第4番 作品28」
ヤニス・キリアキデス「サテライツ 衛星」
ジョルジュ・リゲティ「ピアノのためのエチュード13番 悪魔の階段」
向井山朋子「Bon Bon」
向井山朋子「Berceuse for toy piano(トイ・ピアノの子守唄)」
向井山朋子「インプロビゼーション」
コンロン・ナンカロウ「2つのパートのための3つの習作」
フレデリック・ジェフスキ「ピアノ・ピース第4番」
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ「前奏曲第1番」
カールハインツ・シュトックハウゼン「ピアノ作品IX」

 

photos: Sanne Peper

クレジット

コンセプト&ピアノ:向井山朋子
写真&映像: 長浜徹、向井山朋子、向井山記梨子
シューズ・デザイン、制作: ArtEZ Fashion Masters |へスター・ヴラミングス、アンバー・ヴェルステゲン、デニス・テーリ、イエナ・リエフォーネン
照明デザイン:アンドレ・プロンク
ビデオ&音響:イゴール・シュマリアンスキー

主催

向井山朋子ファンデーション
フローニンゲン・グランド・シアター
デューレン・ロッテルダム

助成

オランダ舞台芸術財団
プリンス・ベルナルド文化財団