シロクロ

ダンス・コンサート (2012年)
向井山朋子、ニコラ・ボイトラー、ジャン・カルマン
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photo: Anja Beutler

the Dioraphte Dance Award 受賞(2014年、オランダ・ダンス・デイズ)

コンセプト

タイトルの「シロクロ」とは、日本語で「白-黒」。「白黒はっきりつける」との意味もあるとおり、差異を明確にする、という意味を持つ。闇は光を強調し、音は沈黙を強調する。
地獄について考えるとき、天国の風景が浮かぶ。あそびというものは、まじめさとの 対比によって強調される。

ロシアの現代作曲家ガリーナ・ウストヴォーリスカヤのピアノ作品「ピアノ・ソナタ第6 番」と「ピアノ・ソナタ第5番」がシロクロの核として舞台を通して鳴り響く。この作品の音楽が持つ強烈な脈動のリズムと痛々しいまでの音群は、舞台の中心に打たれ、そこに 突き刺さったまま、最後の最後まで共振し続ける。全く妥協のないダンス・コンサート。 ダンサー、ミッシェル・リー·ヴァン・ロージとピアニスト向井山朋子、振付師ニコラ・ ボイトラー、照明デザイナージャン·カルマンの4人は、それぞれの役割を存分に発揮し 不屈のエネルギーと高い精度を持つこの作品を完成させた。それは、観客ひとりひとりに 対して「存在することの本質とは?シロ、クロをつけましょう」と挑発挑戦しているかのようだ。

その過激な作曲姿勢から「ハンマーを持つ女」として知られるガリーナ・ウストヴォーリスカヤ作品は、ダンサーとピアニストをより肉体的,ときに暴力的な表現へと向かわせ、パフォーマンスの山場では、シューマンの「6つの習作」の動機を使った即興が、静寂で叙情的な対比を生んだ。

携った4人のアーティストはお互いの領域を慎重に侵犯しつつ、新しい表現を探る希有な制作過程だったと言える。ニコル・ボイトラーの代表作「ルシンダとの対話」、「ガーデン」で見られるような音楽的センスは彼女の作品の中心にあるものである。向井山朋子は イリ・キリアン、伊藤キム、クラブガイ&ロニなどの振付家とのコラボレーションでつち かった身体性を作品と舞台に反映する。一方、若きダンサー、ミッシェル・リー・ヴァ ン・ローイはダンス・カンパニーの文脈からはみでてパフォーマンスを行うのは今回がは じめてだった。しかしミッシェルは分野の異なるアーティストたちとの激しい共同作業のなかで天性の自由さを発揮し、それを力強いダンス、と言う形で発露した。ジャン・カルマンはオランダ国立オペラ劇場で近年「パルジファル」「魔笛」といった舞台照明を手が けるなど国際的に知られる照明デザイナー。彼の「シロクロ」における照明は、振付・ダンス・音楽と同等のバランスで舞台の空気を静かに支配し、舞台の上での表現に相互作用をもたらすこととなった。

Photos: Anja Beutler

クレジット

コンセプト:向井山朋子、ニコラ・ボイトラー
ディレクション:ニコラ・ボイトラー、向井山朋子、ジャン・カルマン
ピアニスト:向井山朋子
振付:ニコラ・ボイトラー
ダンス:ミッシェルリー・ヴァン・ローイ
音楽: ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ、向井山朋子
照明デザイン&セットデザイン:ジャン・カルマン
衣装: ヨージ・ヤマモ、カレン・ベルジョン

テクニカル・コーディネーター:パウル・シュメル
照明技術: フローニンゲン,グランドシアター(アンドレ・プロンク)
技術:ルネ・ロード
リサーチ&アシスタント:ユスタ・テル・ハー
制作:マリーケ・ペーターズ、ヨスタ・オビンク
マネジメント: / マリーケ・ペーターズ(向井山朋子ファンデーション)、マルティ ン・オーストフック(NBprojects)
共同制作:向井山朋子ファンデーション、NB projects
世界初演:2012年10月13日、ダンス・トリエンナーレ・トーキョー
オランダ初演:2013年6月18日、オランダ・フェスティバル

This production is made by the Tomoko Mukaiyama Foundation and NBprojects in coproduction with the Dance Triennale Tokyo, deSingel (Antwerp), Holland Festival (Amsterdam) and supported by the Artist in Residence program of Tanzlabor_21 / Tanzbasis Frankfurt_Rhein_Main.

助成

オランダ舞台芸術財団
AMMODO
プリンス・ベルナルド文化財団
国際交流基金