wasted

ウェステッド
インスタレーション、ピアノ・パフォーマンス、儀式 (2009年)

「静謐さと同時に訪れる衝撃」 – De Volkskrant、2010年3月

「向井山朋子は”閉じた”アート作品と公共の行為の間にある境界をくずし、新しい体験
へとわれわれを導く 」– デイリー・ヨミウリ、2009年8月

コンセプト

「wasted」は、ヴィジュアル・アート・建築・音楽を融合させた国際的なアートプロジェ クト。プロジェクトを構成する要素は互いを補完しあう。このアートに生命を吹き込むの はあなた自身である。

「wasted」の核になっているのは、太古の昔から変わらず「豊穣」の象徴として女性に顕 れたもの、すなわち「月経」である。「産み出す力」の証であるこの身体現象に対する人 間の感情は、世界各地でさまざまな慣習や文化を作るきっかけとなってきた。それはしば しば「忌むべきもの」として扱われ、月経について話すことはタブーとされてきた。しか し同時に月経はいつの時代にも全ての女性が共有するものであり、最も力強く人間同士を 結びつけるものである。実際、あなた自身が今ここにいることの源でもあるのだ。

各地で伝えられてきたさまざまな儀式はもともと「どこにでもある当たり前のこと」の奥 深くに潜むかけがえのない真実に畏敬の念を抱き、その真実を大切に扱おうとする人間の 気持ちの表れだろう。これらの儀式においては、人間の身体はしばしば重要な道具の一部 であり、あるいは崇められる対象そのものである。「wasted」の全容を体験することは、 現代に生きる私たちが自身の身体を見つめなおし、自分の生命の尊さを祝う旅に出ること でもある。

インスタレーション

何千ものおびただしい数の白絹のドレスでびっしりと埋め尽くされた迷路の中を歩く自分
の姿を思い浮かべてほしい。巨大な白絹の塊はあなた自身の第二の皮膚であるかのように
あなたの周囲を密に取り囲む。歩みを進めていくとやがてあなたはこの作品の各である、
人間の身体の中心を象徴する場所にたどりつく。

儀式

希望する参加者たちには、インスタレーションの最後の地点で展示作品と同様の白絹のド レス(S,M,Lのサイズが用意されている)をお渡しする。ただし、ドレスを持ち帰ってい ただくにあたっては、あるお願いがある。作品の中核に展示するためのドレスを作った私 と同じことを、ご自身でも行っていただきたいのだ。すなわち、女性として生まれた自分 の身体の中で繰り返されている「当たり前のことである」月経の期間中に、持ち帰ったド レスを着てほしい。そうすることであらためて自分に与えられた性に向き合い、その結果感じたことを、自由な発想で私と共有していただきたいのだ。自分の体験から得られた感 情を何らかの形にとどめ、私に送ってほしい。文章でもよいし、浮かんだイメージを絵に してもよい。音や映像でもよい。とにかく自分の「思い」を形に換えたらすぐに送り返し ていただく。こうして届けられたあなたの思いは、他の何百、何千もの女性たちからの声 とともに、私が創作する音楽作品のモチーフとして織り込まれ、私自身がそれを演奏する。

感じたことを、自由な発想で私と共有していただきたいのだ。自分の体験から得られた感 情を何らかの形にとどめ、私に送ってほしい。文章でもよいし、浮かんだイメージを絵に してもよい。音や映像でもよい。とにかく自分の「思い」を形に換えたらすぐに送り返し ていただく。こうして届けられたあなたの思いは、他の何百、何千もの女性たちからの声 とともに、私が創作する音楽作品のモチーフとして織り込まれ、私自身がそれを演奏す る。

マルチメディアコンサート

「wasted」は世界地図上に白いドレスの跡を残していく。作品が各地で発表されるたびに 運ばれるドレスの数は減るが、それと同時に作品の各となる数々の「思い」は膨らんでい く。向井山はJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」の30の変奏曲を縦糸に、現代を生きる 女性たち一人ひとりの思いを横糸にして織り込み、古典作品を新しい作品として再生させ る。そしてこの作品をwastedツアーの各開催地で、展覧会のオープニングを彩るコンサー トにおいて発表する。

「wasted」は、越後妻有トリエンナーレ(2009年、新潟/日本)、Cemeti Art House(2009年、ジョグジャカルタ/インドネシア)、SCHUNCK(2010年、ヘーレン/オランダ)、フローニンゲン・パフォーマンス・アート・フェスティバル(2010年、フローニ ンゲン/オランダ)、ミュージックヘボウ・アアン・ヘット・アイ(2013年、アムステルダム/オランダ)などで開催された。

プロジェクトHP: www.wasted.nl

「wasted」のコンサートは以下の曲目の断片と参加者からのフィードバック、を織り込ん
で構成される

J.S.バッハ 「ゴルトベルク変奏曲」
向井山朋子「インプロビゼーション」

※最後の展覧会では、コンサートはない。女性たちによる最後のフィードバックの結果が
セレクションされ、最終的に映像作品となる。

wastedをめぐるフィルム

オランダの著名なドキュメンタリー作家であるアリオナ・ファン・デル・ホルストがこの
プロジェクトを「Water Children(邦題、白い迷路)」というドキュメンタリーにまとめ
た。この映像はオランダの映画館各地で上映され、作品賞を受賞するなど高く評価され
た。

クレジット

コンセプト:向井山朋子
音楽: J.S.バッハ、向井山朋子
デザイン・インスタレーション:向井山朋子 & CUT (千葉大学建築科チーム)
照明デザイン:アンドレ・プロンク
映像編集:ダーン・ヴィエルダ

thanks to

ベッセル・コック

主催

向井山朋子ファンデーション
フローニンゲン・グランド・シアター
アート・フロント
 SCHUNCK*

助成

オランダ舞台芸術財団 プリンス・ベルナルド文化財団 SNS Reaal Fonds
Fonds Cultuurparticipatie モンドリアン財団

Stichting Dioraphte
アムステルダム市文化芸術協議会
アサヒグループ芸術文化財
団 在日オランダ大使館

協賛

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